5.将来計画及び運営方針
いろいろと厳しい客観情勢の中にあって,分子研のあり方,施設・センターの将来計画や運営方針等々の検討が平 成18年度においても活発に行われた。創設以来30年を越えた分子研にとって最も大きな変化は,昨年度のリポート でも触れたが,平成19年4月から実施された組織の大幅な再編である。1年以上に亘る議論を経て研究系と研究施設・ センターを大きく四つの領域に再編した。理論・計算分子科学,光分子科学,物質分子科学,生命・錯体分子科学の 4領域である。それぞれの領域に関連研究施設・センターを配置し,研究系と施設の連携を深め学問的深化をも目指 すものである。一方,施設・センターは,共同利用機関として極めて重要な存在であるので,組織図としては別途独 立にも記載する。汎用機器の共同利用体制をよりスムースにすること,及び,平成19年度概算要求で調査費程度の 予算が認められてスタートすることとなった「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」を受けて,新たに機器 センターを新設することとなった。これに伴い,分子スケールナノサイエンスセンターと分子制御レーザー開発研究 センターの一部機器をこの新機器センターに移管することとした。
各施設・センターの将来計画等は以下の各節で説明されているが,その主要なものは以下の通りである。「ナノ支援」 として行われてきた事業が,平成19年4月から「ナノテクノロジーネットワーク」と言う新しい企画となり,分子 研は引き続きその一部を担うこととなった。理研との連携研究を行っている「エクストリーム フォトニクス」は着々 と成果を挙げつつある。UV S OR は小型としては世界最高の性能を出しており,トップアップ運転への移行やレーザー との合体による新しい光の発信などでも大きな成果を挙げつつある。国家基幹技術としての次世代スパコン開発事業 のうち分子研が責任の中心を担っているナノ分野グランドチャレンジアプリケーションも順調に進行している。また, 自然科学研究機構内の大きな連携事業の一つである「分子・物質シミュレーション中核拠点形成」も機構内外の研究 者との連携研究が進められている。国際共同については,従来からの分子研独自の共同研究に加えて学術振興会の A si an C ore Program が認められ,アジアにおける分子科学の振興と若手研究者の育成を目指した具体的活動が始めら れている。
最後に,上述した「設備有効活用ネットワークの構築」は,全国の化学系組織を持つ大学の協力を得て,将来の有 効な体制構築を目指した活動を始めている。平成19年度には,この新しいシステムが働くことを実証し,平成20年 度概算要求で実質的予算が獲得できるようにしたいと思っている。国及び各大学の更なるご支援を御願いする次第で ある。また,もう一つの平成20年度概算要求として,「大学間連携による最先端固体 N M R の開発と有機分子材料・ 生体超分子構造解明の新機軸創成」(大学間連携)を計画している。
5-1 分子スケールナノサイエンスセンター
自然科学研究機構分子科学研究所分子スケールナノサイエンスセンター規則第2条に,ナノセンターの設置目的と して「センターは,原子・分子レベルでの物質の構造及び機能の解明と制御,新しい機能を備えたナノ構造体の開発 及びその電子物性の解明を行い,これらが示す物理的・化学的性質を体系化した新しい科学を展開するとともに,ナ ノサイエンス研究に必要かつ共通性のある物性機器,研究設備の集中管理を行い,これらを研究所内外の研究者の利 用に供し緊密な連携協力の下で共同研究等を推進することを目的とする。」との記載がある。即ち,ナノセンターは「ナ ノサイエンス研究を行う」機能と,「ナノサイエンス研究に必要かつ共通性のある設備等の集中管理・共同研究の推進」 という機能が要求されていることになる。
平成19年度からは,分子研の組織改編に伴いこれまでのナノセンターの機能が(新)分子スケールナノサイエンス センターと(新)機器センターに分かれることになった。ヘリウムや窒素の液化機・供給装置を含め汎用的な装置類 およびそれらの装置の責任者であった技術職員は(新)機器センターに所属替えとなった。ナノセンター所属の教員 も配置換えとなり,小川,加藤,鈴木,永田,桜井がナノセンターの専属教員となり,他の教員は研究領域を本務と することとなった。ナノセンターの重要な業務であるナノ支援を効率的に行うために,研究領域所属の教員でナノ支 援にかかわる者は,ナノセンターの併任教員とすることとなった。この組織改編により,ナノセンターがより先鋭的 にナノサイエンスの研究を行う組織になったといえる。ナノセンターの管理として残る装置には,920M H z N M R , T E M,S E M,F IB などのナノ支援により導入された装置とクリーンルームがある。
本ナノセンターは,全国から注目を受けている組織であり,今後より積極的な人事およびナノサイエンスのための 先端的大型装置導入を図り,日本のナノサイエンスの中心と目されるように努力する必要がある。
5-2 極端紫外光研究施設(UV S O R )
U V S OR は,1983年完成後,エネルギー 750 M eV ,エミッタンス 160 nm- rad の電子蓄積リングにアンジュレータ 2台と超電導ウィグラを設置した典型的な第2世代の低エネルギーシンクロトロン光源であったが,2000年以降, 特に2003年の大改造を中心とする一連の改造により低エネルギーリングとして極端紫外光領域に最適化された第3 世代光源 U V S OR - II へと生まれ変わった。エミッタンスは 27 nm- rad で定常的に運転されており,これは 1 G eV 以下 の光源(計画・建設中のものも含む)では MA X -III(スウェーデン)に次ぐものである。また,挿入光源の増強も進み, 現在は4台のアンジュレータが設置され稼動している。そのうち2台は真空封止型であり,比較的短波長領域を,また, 残り2台は可変偏光型であり,比較的長波長側をカバーする。これらのビームラインはすべて世界トップクラスであ り,国際的な利用が始まっている。さらに挿入光源設置可能な空間としては 1m 強の直線部2箇所が残されており, 今後の検討を行う。
以下では,光源開発の現状と展望について,平成19年2月14日開催の第49回 U V S O R 施設運営委員会で議論し たものをまとめておく。
5-2-1 UV S O R -II 光源加速器の高度化の現状と展望
今後2〜3年の U V S O R - I I 光源加速器の高度化としては,当面,①トップアップ運転の導入,②軌道安定化,③挿 入光源の更なる増設の3つが柱になる。また,④多様な利用モードを可能にする運転時間の見直しも必要である。将 来的には,⑤ M A X - I I I の性能を超える U V S O R - I I I のための改造も視野に入れる必要がある。以下に,それぞれにつ いて簡単に説明する。
(1) トップアップ運転の実現に向けては,既に,ブースターシンクロトロンのフルエネルギー化(従来は最大エネル ギーが 600 MeV であったが,電磁石電源の増強により 750 MeV まで向上),放射線遮蔽壁の増強が完了し,入射路の フルエネルギー化を2007年春に実施する予定である。この後,フルエネルギー入射調整,輸送効率の向上,インタロッ クシステムの整備などを行い,できるだけ早期のトップアップ運転の実現を目指す。
(2) U V S O R - I I では数時間で 100 ミクロンを超えるような軌道変動が観測されており,光源本来の高輝度特性を活か す妨げとなっている。現在,軌道変動の原因究明と軌道安定化システムの開発を急いでいるところである。水平方向 の軌道安定化については既に部分的にフィードバックシステムを導入しており,今後1年以内に水平垂直両方向の安 定化システムを導入することを目指している。
(3) U V S O R - I I 光源加速器の設計はアンジュレータ利用に最適化されたものとなっており,光源本来の特徴を活かす ためにも,アンジュレータ及びビームラインの早期の整備が望まれる。どのようなアンジュレータを整備するか,利 用側と協議しながら検討を進めていく。
(4) 光源性能そのものではないが,運転時間についても,拡大の余地が出てきている。U V S O R - I I の運転時間は建設 時の放射線申請により1日12時間に制限されてきたが,2006年夏に変更申請を行い,一日24時間の運転が可能と なった。マンパワーの問題でユーザー運転の延長を直ちに行える状況にはないが,シングルバンチ運転,自由電子レー ザー利用など,ユーザーの限られる特殊な運転モードを夜間に実施することを試験的に開始している。柔軟な運転モー ドの切り替えは小型施設の特徴を活かせるものであり,従来にないシンクロトロン光の新しい利用形態が開拓できな いか,模索しているところである。
(5) 更に長期的な展望としては,U V S OR -III 計画と名付けることのできる光源リングの更なる高度化改造の可能性が ある。予備的な検討により偏向電磁石を複合機能型とすることで,現在のエミッタンス 27 nm-rad を更に 15 nm-rad 程
度まで改善できることがわかっている。四極電磁石の削減に加え,入射点の移動など機器の再配置を行うことで,現 在入射に使用している 4 m の長直線部を挿入光源用に転用できる可能性が出てくる。
5-2-2 UV S O R 自由電子レーザーの現状と展望
U V S O R における自由電子レーザー開発は,加速器の設計段階から光共振器の建設を想定しているなど,施設の看 板ともいえるものである。実際90年代には,円偏光型光クライストロンの導入により当時の発振短波長世界記録を 樹立するなど,F E L研究で華々しい成果を挙げた。しかし,その後は,D uk e 大学や産総研などにおける F E L専用リ ングの稼動,第3世代リング E l ettra における F E L実験の開始などにより,開発研究面での競争力が低下し,一方, 発振波長域は紫外から可視光に限られていることから,通常レーザーとの競合もあり,利用研究はほとんど進まなかっ た。
しかし2000年代になり光源加速器が U V S O R - I I へと改造されたことで,再び世界的な競争力を取り戻した。低エ ミッタンス化と高周波加速系の増強によるピーク電流値の向上で,波長200–250 nmの深紫外の領域で大強度の発振 が可能となった。また,従来 F E L実験は電子エネルギー 600 M eV で行っていたが,750 M eVでも発振できるように なり,その結果,ビーム寿命が長くなり発振継続時間が長くなると同時に平均出力も向上,波長によっては 1 W を超 えるまでになり,蓄積リング F E Lとしては出力で世界最強となった。深紫外領域で波長連続可変,高出力という特徴 は,通常レーザーと比べても一定の競争力があり,利用の申し込みも徐々に増えてきている。今後は,利用に向けた 研究開発・装置の整備が重要となってくる。
利用の拡大に向けて当面課題となるのは,出力の安定化,実験装置へのレーザー光の安定な輸送法の確立,ミラー 交換の高速化,などである。出力の安定化にはフィードバックシステムの導入を検討中である。レーザー光の輸送は, 放射光ビームラインに既設の装置に F E L光を導入したいという希望が多く,場合によってはリングの反対側まで輸送 する必要がある。従来のミラーを使った輸送法の改良に加えて光ファイバーを使った輸送の検討を開始している。光 共振器には多層膜ミラーを使用しており,波長を大幅に変えるには超高真空中に設置されたミラーを交換する必要が ある。交換すると真空立ち上げなどに数日間かかってしまう。超高真空中で複数枚の多層膜ミラーを設置し,随時交 換できるようなシステムの検討を始めたところである。
F E L性能そのものに関する今後の展望としては,光クライストロンの更新による更なる短波長化,大強度化が考え られる。UV S OR -II となって長くなった直線部に 3 m 強の光クライストロンを導入することで,E lettra や D uke 大学と 同等の波長 180 nm 付近での発振も可能となるものと思われる。更なる短波長化には,ミラーそのものの開発研究が 必要となってくる。
5-2-3 UV S O R -II における外部レーザーを利用した新しい光発生法の開発
2005年に U V S O R - I I の高周波加速と同期の取れるフェムト秒レーザー装置が導入された。これを利用した複数の 新しい光発生法に関する研究がスタートしている。
(1) レーザーバンチスライスによるフェムト秒パルス生成及びコヒーレント光発生
レーザーバンチスライスは90年代の後半に米国の研究チームにより提唱されたビーム技術であり,極短レーザー パルスと電子バンチをアンジュレータ中で相互作用させることで,電子バンチの一部に強いエネルギー変調が生成さ れ,このバンチが蓄積リングを進行する際に変調を受けた部分が切り出される,というものである。切り出されたバ
ンチの一部はレーザーパルス長と同程度の長さとなるために,その部分からの放射光を取り出すことでフェムト秒の 放射光パルスを生成する,というのが当初のアイデアであった。しかし同時に,残りのバンチ上に形成されたディッ プ構造からテラヘルツ領域のコヒーレントシンクロトロン放射が生成されるため,現在はこれら2つの目的で研究が 進められている。これまで,A L S ,B E S S Y - II が先行しており,U V S OR - II での実験は世界的には3例目ということに なる。最近では S L S でも開始されたとの情報があり,S oleil などでも導入が検討されているようである。
他 の 施 設 で は バ ン チ ス ラ イ ス 実 験 の た め に 加 速 器 の 一 部 を 改 造 す る な ど 大 掛 か り な 準 備 が 必 要 で あ っ た が, U V S O R - I I では既存の自由電子レーザー用の装置群を流用することで加速器本体には全く手を加えることなく実験を 開始することが出来た。また,電子エネルギーが低いために,必要なエネルギー変調を生成するためのレーザーパワー が比較的低くてよい。最初の実験で直ちに,大強度のコヒーレントテラヘルツ光の発生を確認でき,その後,分子研 の国際共同研究を利用したリール工科大学(仏)との共同実験で入射レーザーパルス形状の制御により,波長可変準 単色のテラヘルツ光の生成に成功するなど,世界的にもトップレベルの成果が挙がるようになってきた。テラヘルツ 光の観測は既存の赤外ビームライン B L 6B を用いて行っている。今後は利用法の開拓とそれに向けた光源開発を更に 進めていきたいと考えている。
テラヘルツ光の観測によりバンチスライスが起きていることは実証できているものの,フェムト秒放射光の直接観 測はまだ行っていない。こちらについても今後観測装置を整備し実施したいと考えている。
バンチスライス法は既存の放射光リングで,従来の放射光とは異なる時間構造,あるいは,ピーク強度の桁違いに 強い光を比較的簡便に生成できる。これら各種の光の単独での利用に加えて,通常の放射光も含めた,複数の性質の 異なる光を同時に利用するタイプの利用方法を開発していくことが重要であると認識している。このことは先に述べ た F E Lについても同様である。
(2) コヒーレント高調波発生
レーザーバンチスライスに用いているレーザー装置を用いて,S ol ei l(仏)のグループと共同でコヒーレント高調 波発生(C oherent Harmonic Generation; C HG)の研究を開始している。C HG は,レーザーパルスと電子バンチをアンジュ レータ中で相互作用させることで生じるエネルギー変調を利用することはバンチスライスと同じである。従って,レー ザーバンチスライスとほぼ同じセットアップで実験できる。電子バンチがアンジュレータを進行する際にバンチ中に レーザー波長と同じ周期での密度変調が生じ,コヒーレントなシンクロトロン放射(アンジュレータ放射)をするが, 密度変調には一般に高調波成分も含まれるために,コヒーレント放射も基本波だけでなく高調波も放出される。
C HG は,X線自由電子レーザーなどいわゆる S A S E を基本原理とするコヒーレント光生成における原理的な不安定 性を取り除く手段として期待されている。本研究では,直線加速器よりも安定性に優れる電子蓄積リングの電子ビー ムを利用し,効率的に技術・知見の蓄積を行おうとしている。
5-2-4 新しい光源建設の可能性
新しい加速器の建設を伴う将来計画の検討では,これまで様々な可能性を幅広く検討してきた。現在,世界に於け る先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になりつつある。通常の レーザー光源を組み合わせることで,さらなる発展も期待されている。U V S O R はこれまでリング型を中心に新たな 光源開発を組み込んで共同利用に供してきたが,今後は U V S O R で培ってきた光源開発技術を直線型にも応用するこ とで,世界に先駆けて新たな特性をもつ光源が分子科学に於いて最初に手にはいるようにしていく必要がある。なお,
その先の光源加速器はリング型の特性と直線型の特性を併せ持つ E R Lと呼ばれる光源になるのではないかと言われ ており,プロトタイプの開発も一部では始まっているが,現在のリング型と直線型の性能を越えるものにするには, まだまだ解決しなければならない多くの困難があり,今後,最低でも10年くらいの開発期間が必要とされる。
以下,現在考えられる将来計画の様々な可能性についてまとめておく。
(1) リング型光源
U V S OR の次期計画として,U V S OR - I I から U V S OR - I I I への改造ではなくて,全く新しいリング型光源を建設する 場合,考えられる方向性は以下の3つであると思われる。
(a) 1GeV級小型X線リング
(b) 2–3GeV 級中規模第3世代リング
(c) 1GeV級超高輝度リング
このうち ( a) は 1G eV級の小型リングに超電導偏向電磁石を導入することで硬X線の発生可能な小型施設を建設す るというものであるが,これについては名古屋大学と愛知県が協力して実現を目指しているところである。高輝度で はないものの U V S O R - I I では出せない硬X線領域をカバーする施設が近隣にできることになり,U V S O R - I I とは相補 的な役割を果たすものと期待される。そういう意味では現 U V S O R の後継機として岡崎の地で考える必要はないであ ろう。(b) の2–3GeV 級中規模第3世代リングは,東大・東北大がかつて建設を目指していたような規模・性能の光源 である。東大や東北大が断念したことを考えると予算規模や敷地の問題など実現は容易ではないが,現 U V S O R の後 継機の可能性のひとつとして想定しておくべきである。( c ) は 1G eV級でエミッタンス 1 nm- rad もしくはそれ以下の 超低エミッタンスリングを想定している。V U V 領域での回折限界光源の実現を目指す。以下で述べる E R Lなどに比 べて安定性に勝る光源が既存の加速器技術を用いて実現できる可能性がある。また,共振器型自由電子レーザーや C HG など外部レーザーと組み合わせたコヒーレント光発生装置も併設できる可能性がある。
(2) 直線加速器を用いた自由電子レーザーの可能性
現在,世界に於ける先端的な光源加速器施設は全く異なる性質を持つリング型と直線型を併設するのが標準になり つつある。X線自由電子レーザーのテスト機程度もしくはもう少しエネルギーの高いライナックを利用して,シード 光を用いたシングルパス型自由電子レーザーを原理とする光源を U V S O R に併設する。X線自由電子レーザーやリニ アコライダーなどの建設を通じて確立される加速器技術と,現在 U V S O R - I I で行っている C H G に関する基礎研究で 得られた知見などをベースに実現する。V U V ・軟X線領域でのコヒーレント光,極短パルス光の発生を目指す。併設 が不可能な場合には他機関の加速器装置を利用した光源開発や利用研究も想定しておくべきであろう。
(3) エネルギー回収型ライナックを用いた新しい光源の可能性
エネルギー回収型ライナック(E R L )は現在 K E K - P F と原子力機構が中心となってX線の発生に重点を置いた大型 施設の建設を検討しているが,そこで確立された技術を元に,V U V ・軟X線領域に最適化された比較的小型の施設を 建設する。V UV・軟X線領域での回折限界光の発生,極短パルス光の発生に加えて,シングルパス自由電子レーザー, 共振器型自由電子レーザーを組み合わせることが出来る可能性もある。ただし E R L光源が実用になるのは10年を超 える先の長い話なので現時点では他の検討のほうが重要である。
5-3 分子制御レーザー開発研究センター
5-3-1 分子制御レーザー開発研究センターの現状
分子制御レーザー開発研究センターは,旧機器センターからの改組拡充によって平成9年4月に設立された。分子 位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー開発研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所 内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用機器,小型貸出機器を保有,維持管理し,利用者の便に供している。
各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,またセンター共通の技術支援には技術課の3名の技術職員が当 たっている。放射光同期レーザー開発研究部は猿倉助教授が担当し,分子研 UV S OR との同期実験に向けた基礎的レー ザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラヘルツ光源の開発などの成果を挙げたが, 平成18年1月に大阪大学レーザー・エネルギー学研究センターの教授として転出した。特殊波長レーザー開発研究部 は平等助教授が担当し,分子科学の新たな展開を可能とする波長の可変な特殊波長(特に赤外域)レーザーの開発の他, マイクロチップレーザー光源等の開発を行っており,産業界からも注目される成果を挙げている。分子位相制御レー ザー開発研究部は,分子制御のための時間的特性を制御したレーザーの開発と反応制御実験を目的として設置された が,佐藤助教授が平成12年に転出した後,現在欠員となっている。
5-3-2 分子制御レーザー開発センターの今後
今年度は本研究所の研究系・施設の見直しが行われ,この議論を通して以下のように本センターを位置づけること とした。分子研開設以来のこの大幅な組織再編成の中で,本センターのあり方に強く関連する事柄は以下の2点であ る。
第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質との相互作用に基づく分子科学を展開する研究領域と して新たに光分子科学研究領域が設けられることが挙げられる。従来はこの研究領域の研究が,主に分子構造,電子 構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設と本センターとに別々に所属する研究グループによって行 われてきた。しかし,この組織形態は多くの共通した概念,方法論を基本とする研究グループを縦割りに分断し,研 究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論をややもすると阻害する要因となっている。レーザーを用いた研 究グループはすでに「エクストリーム・フォトニクス」のプログラムにより,組織横断的に各グループ間のつながり を持つ機会が増えている。そこで,この新研究領域を創設することにより,放射光関連の研究グループとの間の壁も 取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化することを目指している。
第二の点は,機器センターの設置である。本研究所には以前同センターが設置されていたが,前節で述べたように 極低温センターと化学試料室と共に廃止され,本センターと分子物質開発研究センターが設置された。しかし,共通 機器を一括して管理運営し,所内外の研究者の共同利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置さ れることとなった。このため,本センターが管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管される。この 措置により,本センターは従来の共同利用に関する業務を相当圧縮することができ,その業務のほとんどを開発研究 に移すことが可能となった。
上記の2点はどちらも本センターを分子研における光分子科学研究における開発研究の文字通りの中心として活動 するための環境を整えるものといえる。またこれは,昨年度に構想した「光分子科学研究センター」の精神に沿った ものである。
したがって,本センターは今後,光分子科学研究領域の研究グループと密接な連携をとりながら開発研究センター としての機能を果たさねばならない。ただし,当該研究領域の研究グループと本センターの役割の違いははっきりと
認識すべきである。すなわち,当該研究領域における個々の研究グループがそれぞれの興味のもとで光分子科学にお ける研究分野を開拓しようとするのに対して,本センターの業務は光源開発を含む光分子科学における新分野を切り 拓くための装置,方法論の開発研究に重点がおかれるべきである。本センターが開発研究を本務とし,そこで得られ た知識,技術,方法論を蓄積し,共同利用研のセンターとして開発された部品や装置および手法を所内外に提供・共 同利用に供する点にこそ,当該研究領域における通常の研究活動と一線を画する違いが存在する。
ただし,これらの研究と開発研究の間を明瞭に区別することは困難な場合があり,これが渾然一体として研究がな されることもあり得る。このような状況を鑑みると,本センターと当該領域間の研究グループの相互乗り入れは不可 欠である。したがって,新組織のもとでは開発要素のある研究を遂行する当該研究領域のグループが本センターに併 任し,本センターのリソースをも使いながら開発研究をするなどの措置をとる必要がある。また,共同利用研のセン ターとしては,所外の光分子科学研究者との共同開発も推奨されるべきである。
本センターの開発研究の主な分野としては以下のものが挙げられる。
①テラヘルツから軟X線にいたる新たなコヒーレント光源開発(光を創る)
②光イメージングとナノ領域顕微分光法の開発(光で観る)
③光位相の精密制御による物質波のマニピュレーション(光で制御する)
これらの研究課題は,レーザー光源の開発から新たなスペクトロスコピー,および,マイクロスコピー,制御法に 至る統合的な研究手法を開発するものである。これに加えて,放射光を用いた研究との連携をさらに検討すべきであ ろう。これらの分野での開発研究から他に類を見ない装置や方法論を開発し,本センターが分子科学研究所の一つの 重要な柱として分子科学分野へ大きく寄与し,新たな共同利用の機会を創出していかねばならない 。
5-4 装置開発室
装置開発室は分子科学の新展開に必要な新しい装置および技術を開発することと日常の実験研究に必要な部品およ び機器の製作を迅速に製作するという2つの役割を行ってきた。前者の新しい装置の開発には,実験研究者との密接 な協力体制で取り組んでおり,所内研究者のみならず所外の実験研究者とも平成17年度に整備した施設利用を通じ て行っている。また,後者の迅速な部品製作等は加工技能を持つ短時間契約職員の協力により対応している。この様に, 新しい装置・技術の開発と日常の実験研究に対する技術支援の両輪を今後も発展させることは,運営委員会において も必要であると認識された。これらをふまえた今後の方針について以下に記す。
5-4-1 独自技術の開拓
研究者との協力で新装置を開発する際に,装置開発室の持つ従来技術のみでの対応はやや不足感があり,時代の流 れに即した研究の要請に応えられるよう特化した技術を装置開発室の独自技術として確立することが重要である。こ れまでに「現有設備によるマイクロ加工」としてマイクロ流路,マイクロ構造の機械加工について取り組んできた。 このマイクロ加工技術を基盤として,現在,所内および所外からも比較的ニーズの高いユニークなマイクロ流体回路 技術および周辺のマイクロ機器製作技術についてさらに取り組んでいくこととする。将来はそこで獲得した独自技術 を核として,今後の施設利用をはじめ,さらには他機関との共同技術開発へと発展させることによって装置開発室が 分子研の共同利用により一層貢献できるものと考えている。
5-4-2 装置開発室の機械設備
分子研創設当初に設置された工作機械は30年近くを経過し,まだ現役で使用されている。また数値制御機械も順 次整備されてから20年以上経過した。その多くは老朽化で精度等が低下していることと,機械の維持においても整 備にかける時間と経費の負担が増加している状況がある。さらに,近年の工作機械の性能が大きく向上し,現設備と 能力に大きな開きがあり,この種の最先端の加工用機械は非常に高価なため,高度な加工技術を必要とする製作は装 置開発室ではなく外部にまかせるといった現象が生じている。これらは分子研の新しい展開の研究支援にも大きく影 響し,支援する技術者の技術力向上にもよい方向とは言えない。そこで,今後の支援業務の方針に合わせた設備計画(更 新,廃棄,拡充など)を立て,運営委員会などで設備整備の検討を進めていくこととする。
5-5 計算科学研究センター
計算科学研究センターにおいては,2000年度における計算科学研究センター化にともない,従来の共同利用に加 えて,理論,方法論の開発等の研究以外にも,研究の場の提供,ネットワーク業務の支援,人材育成等の新たな業務 に取り組んできているところであるが,2006年度においても,次世代スーパーコンピュータプロジェクト支援,分子・ 物質シミュレーション中核拠点形成,ネットワーク管理室支援等をはじめとした様々な活動を展開してきている。上 記プロジェクトについてはそれぞれの項に詳しく,ここでは共同利用に関する活動を中心に,特に設備の運用につい て述べる。
2007年1月現在の計算機システムの概要を下図に示す。システムは大きく分けて2系統からなる。最初のものは 共同利用に供している超高速分子シミュレータと汎用高速演算システムからなり,前者は今年度,2006年7月に新 たに導入され,後者は2003年3月に更新されて山手地区に設置されている。もうひとつは,次世代スーパーコン ピュータプロジェクトにおけるアプリケーションの開発環境であるが,これらはいずれも分子科学やナノサイエンス の計算科学分野における高性能システムである。
システム構成図
まず,2006年7月より運用を開始した新システム「超高速分子シミュレータ」は,これまでの共同利用のスーパー コンピュータシステム(富士通 VPP5000,SGI2800/Origin3800)の後継機である。新システムは,量子化学,分子シミュ レーション,固体電子論,反応動力学などの共同利用の多様な計算要求に応えうるための汎用性があるばかりでなく, ユーザーサイドの PC クラスターで実行が不可能な大規模計算を実行できる性能がある。新システムは富士通の PrimeQuest と SGI の Altix4700 から構成される共有メモリ型スカラー計算機で,両サブシステムは同一体系の CPU(Intel Itanium2)および OS(Linux2.6)をもとに,バイナリ互換性を保って一体的に運用される。システム全体として総演 算性能 8 Tflops で総メモリ容量 10 TByte 超である。
PrimeQuest サブシステムは,64 CPU コア/ 256 GB からなる SMP ノード10台で構成される。演算ノード間は 16 GB/s のバンド幅で相互接続され,大規模な分子動力学計算などノード間をまたがる並列ジョブを高速で実行すること ができる。Altix4700 サブシステムは2ノード構成からなり,それぞれ 512 CPU コア/ 6 TB および 128 CPU コア/ 2 TB を有する NUMA 型の共有メモリシステムである。さらに本サブシステムには,磁気ディスク装置 SGI TP9700 がジョ
ブ作業領域として提供され,実効容量 104 T B および総理論読み出し性能 12 G B /s を有するディスク I /O を実現する。 本サブシステムは大容量(最大 6 T B )の共有メモリおよび超高速ディスク I/O に特徴をもち,大規模で高精度な量子 化学計算を可能とする。
共同利用における新システムの導入にあたり,運用面でも世界をリードする計算科学研究を本センターから発信し ていくことができるよう,大規模ユーザのために新たに施設利用Sを設定した。これに従い,審査により,年間3- 4件程度の利用グループに本システムを優先的に使用していただき,従来の共同利用の枠を超えた超大規模計算の環 境を提供している。
2003年3月に導入された汎用高速演算システムは,NE C 製 S X -7 で構成される主システムと T X -7 で構成される副 システムとから成る。NE C S X -7 は l C PU あたり 8.8 G flops の最高演算能力を持ち,256 G B の共有メモリに結合され た 32 C PU の演算装置から構成され,総合演算性能 282.5 G f l ops の共有メモリ型ベクトル計算機である。また,T X -7 は 4 G B のメモリを持ち最大 4 G f l ops の演算性能を有する C PU を32台搭載したノードを基本単位として構成されて いる。本システムは2ノードから成り,合わせて 64 C PU,256 GB ,256 Gflops の総合性能を有する分散メモリ型スカ ラー計算機である。このうち主システムは高速演算,大容量メモリを活用した大規模分子科学計算に用いられ,また 副システムは分子科学計算に加え,ホモロジー検索を主としたバイオサイエンス分野での利用に供されている。
共同利用に関しては,2006年度も141の研究グループの総数555名にもおよぶ全国の利用者に共同利用施設とし て広くサービスを提供し,計算科学分野の中核的拠点センターとしての役割を果たしている。これに答えるために, 通常の研究室レベルでは不可能な大規模計算を実行できる計算環境をさらに充実するために,汎用高速演算システム を2008年2月に更新する。
一方,次世代スーパーコンピュータプロジェクト・ナノ分野グランドチャレンジ研究におけるアプリケーション開 発環境として,H i tachi S R 11000 と H A 8000 を運用している。このうち,S R 11000 は,総合理論演算性能 5.44 T f l ops, 総メモリ容量 3.072 T B の共有メモリ型スカラ並列コンピュータであり,システムは 16way(C PU)を持つ演算ノード 50台で構成され,ノード間は 8 G B y te/s のクロスバーで相互接続されており,周辺装置として 6.8 T B の R A I D ディ スク装置装備している。H A 8000 は,総合理論演算性能 5.495 G F l ops,総メモリ容量 1.796 T B の分散型スカラ並列コ ンピュータで,演算ノードとして 2 C PU を持つ PC サーバ 449 台から構成され,128 ノードごとに 2 Gbps で相互接続 してクラスタを形成している。各クラスタは,周辺装置として 1.1 T B の R A ID ディスク装置を備えている。
計算科学研究センターは,国家基幹技術の一つとして位置づけられている次世代スーパーコンピュータプロジェク トの中で,ナノサイエンスに関わるアプリケーション開発という重要な役割の一端を担っており,分子科学に関わる 計算科学研究のナショナルセンターとでもいうべき分野拠点として,多様な活動の展開がさらに求められている。
5-6 系・施設の在り方等の検討を踏まえての現状報告
平成17年度前期に分子研の今後の進むべき方向とその受け皿となる研究体制(特に研究系及び施設の在り方)を 探るために系・施設の在り方等検討委員会が設置され,各事項について現状,基本提案,参考意見をまとめた。その後, 主幹施設長会議,教授会議等で議論を進め,平成18年より順次,実行に移している。ここではその現状を報告する。
5-6-1 研究系の在り方
(1) 平成19年度より現在の研究系は廃止し,分子科学を広い視点で捉えることができるように分子研全体で研究領 域(従来と違う意味での“ 研究系” である)4つにまとめることにした。具体的には理論・計算分子科学研究領域, 光分子科学研究領域,物質分子科学研究領域,生命・錯体分子科学研究領域である。関連施設センターを含めるとそ れぞれ約10研究グループから構成される。288 ページの組織図を参照のこと。
(2) 研究主幹(研究領域主幹)は4人と少なくなるが,所長とともに研究所の重要事項を検討する執行部的な組織と しては適正規模となる。各研究領域の代表である研究主幹の意識次第ではあるが,このような組織作りによって法人 化によるトップダウン傾向の弊害をさけうるボトムアップ的要素を盛り込むことが出来る。新体制で研究主幹に加え て,研究総主幹あるいは副所長が必要かどうかは,別途,その選考方法と位置づけから考え直す必要がある。 (3) 研究領域を構成する研究部門については,3グループ程度で1研究部門を構成するようにした。
(4) 岡崎共通研究施設である岡崎統合バイオサイエンスセンターと計算科学研究センターに属する分子研関連の研究 グ ル ー プ は そ れ ぞ れ 分 子 研 の 各 研 究 領 域 内 に 併 任 で き る よ う に 平 成 19 年 度 よ り 適 切 な 研 究 部 門 を 設 置 す る こ と に なった。
5-6-2 施設の在り方
(1) 平成19年度に再編される各研究領域は,研究部門と関連施設から構成されている。同じ研究領域に属する各研 究部門が積極的に施設の活動に連携協力する。施設は本来,所内研究者に異動があろうとも分子科学コミュニティ(所 内を含む)に対して高度な研究支援業務を継続的に行うところであり,それが構造的に難しくなっている施設はその 施設が属する研究領域が中心になってその組織を早急に立て直す必要がある。例えば,光分子科学研究領域に属する レーザーセンターは U V S O R と共同して光分子科学における高度な共同利用を目指す。各施設に所属させる専任研究 職員については,原則的に同じ研究領域の中での配置換えでの対応で考える。専任以外に所内併任も考える。 (2) 平成19年度より,機器センターを改めて設置する。研究所創設来,所内外の研究者の支援をしてきた施設の流 れから見れば,ナノセンターは,極低温センター,化学試料室,旧機器センターの機能を引き継ぐ立場にあるが,こ れら旧来の機能はナノセンター所属の研究者が進む方向とは必ずしも一致していない。現在,ナノセンターでは弱体 化しつつある極低温センター,化学試料室,旧機器センターの機能を改めて機器センターで強化発展させる。当面, 機器センターは装置開発室と同様に研究職員を置かず,技術職員だけで構成されるため,研究領域に関連づけること はしない。
5-6-3 IMS フェロー制度
(1) IMSフェローの質を上げるための待遇改善(他のポスドク枠との競争)の必要性は認識しているものの,具体 化については検討が進んでいない。
(2) 所長から配分される研究費(ポスドクの人件費・研究費に対する支援がある程度含まれているとする)によって, 各リーダーの自律的判断で,随時,雇用(自然科学研究機構の雇用条件に従う)してよいものとする提案については, IMSフェローの配分保証のない助教授層からは強い支持があったが,人件費削減や予算確保の難しさ等の理由で実 現には至っていない。
5-6-4 助手制度
(1) 教授に助手2名を配分(60歳越えの教授は従来通り1名だけ配分)することについては助教授層からも理解を 得ていたが,人件費運用の観点で所長の決定にまではなかなか至らなかった。しかし,運営費交付金の年 1% 削減方 針についてこれまでは物件費と人件費の区別がなかったのが,区別することになったため,人件費枠内での運用を考 えなければならなくなった。そのため,平成18年度から教授に助手2名を配分することになった。2人目の助手の 配分の順番については所長が決める。
(2) 現在,教授数と助教授数は同数であり,この数を保ったまま教授のすべてに助手2名を配分することは長期的に は不可能である。分子研は流動性が高く,研究者の平均年齢は年に依らずほぼ一定になっているが,人件費の年平均 1% 削減が続く限り,実質的に研究グループ数を減らす必要がある。分子研の使命の一つである学問の動きを的確に 捉えて分子研で花を咲かせて,それを大学に伝えていくためには,助教授(教授よりも流動に貢献している)の割合 を相対的に増やす,つまり,3研究グループ構成が基本となる研究領域を構成する研究部門で順次,助教授グループ の割合を増やす必要があるかも知れない。
5-6-5 併任制度と客員制度
(1) 各研究領域に定員を定めない客員研究部門(外国人客員部門や先導分子科学研究部門を含む)を置き,同じ研究 領域の専任研究部門及び施設で話し合って研究分野を定めて公募することになった。
(2) 外国人客員教授・助教授については資格審査を主幹施設長会議で行い,各グループの研究員的な外国人研究者に ついては客員教授・助教授としては取り扱わないことになった。
5-6-6 分子研 O B とコミュニティ
(1) 組織として“ 卒業生” に対して何ができるかを考えた場合,そのひとつの案として分子研レターズという場を活 用することになった。若い世代に分子研に対する愛着を持ってもらうには,分子研の研究活動や今後の進んでいく道 を“ 在校生” と“ 卒業生” が協力して伝えることが重要である。
(2) 今は大学共同利用機関として分子研がいろいろな研究分野のコミュニティに果たす義務というものを改めて見直 す時期である。この観点では,所内的に分野横断的な情報交換が不足気味なのも是正する必要がある。予算が削減さ れたため中断していた岡崎コンファレンスはその重要性を勘案し,平成19年度より再開することとした。
(3) 総研大の宣伝が主目的の分子研オープンハウス(5月〜6月のいずれかの土曜日の午後)に連動させる形で,前 日金曜日の午後から土曜日の午前に分子研OBや総研大卒業生の講演会(分子研シンポジウム)を開催することにし た。また,オープンハウスのガイダンスでは総研大の紹介に加え,分子研の共同研究体制等についても紹介すること になった。院生ばかりでなく助手など若手研究者の参加も募る。
(4) 平成20年度より大学院生自身が申請代表者として提案できる研究会等の企画を支援する共同研究の枠組みを作 るべく,検討が始まっている。分子科学関連の各分野の若手の会や夏の学校の支援も含む。
組織再編
I.理論・計算分子科学研究領域[研究主幹]
・理論分子科学第一研究部門
・理論分子科学第二研究部門
・計算分子科学研究部門(一部併任)
・理論・計算分子科学研究部門[客員]
計算科学研究センター(岡崎共通研究施設)
II.光分子科学研究領域[研究主幹]
・光分子科学第一研究部門(一部併任)
・光分子科学第二研究部門(一部併任)
研究組織 ・光分子科学第三研究部門
・光分子科学第四研究部門[客員]
極端紫外光研究施設
・光源加速器開発研究部門
運営顧問会議 ・電子ビーム制御研究部門
所 ・光物性測定器開発研究部門
・光化学測定器開発研究部門
長
分子制御レーザー開発研究センター
運営会議 ・先端レーザー開発研究部門
[研究総主幹] ・超高速コヒーレント制御研究部門(併任)
・極限精密光計測研究部門(併任)
III.物質分子科学研究領域[研究主幹]
・電子構造研究部門
・電子物性研究部門
・分子機能研究部門
・物質分子科学研究部門[客員]
分子スケールナノサイエンスセンター
・ナノ分子科学研究部門
・ナノ計測研究部門(併任)
・ナノ構造研究部門(併任)
・先導分子科学研究部門[客員]
IV.生命・錯体分子科学研究領域[研究主幹]
・生体分子機能研究部門(一部併任)
・生体分子情報研究部門(一部併任)
・錯体触媒研究部門(一部併任)
・錯体物性研究部門
・生命・錯体分子科学研究部門[客員]
岡崎統合バイオサイエンスセンター(岡崎共通研究施設)
・戦略的方法論研究領域
・生命環境研究領域
研究施設 極端紫外光研究施設[施設長]
分子スケールナノサイエンスセンター[センター長]
分子制御レーザー開発研究センター[センター長]
機器センター[センター長]
装置開発室[室長]
計算科学研究センター[センター長](岡崎共通研究施設)
岡崎統合バイオサイエンスセンター(岡崎共通研究施設)
安全衛生管理室
広報室
史料編纂室
技術課
[註]外国人客員と研究施設客員はそれぞれの研究領域の客員部門で対応する。ただし、分子 スケールナノサイエンスセンター客員は先導分子科学研究部門で対応する。また、研究部門 間の併任は、研究領域を跨ぐことも可能であり、適宜、人事流動等に応じて見直す。
5-7 化学系研究設備有効活用ネットワークの構築
法人化以降の国立大学等に対する予算の仕組みの変更と近年の国の財政状況の悪化の為に,全国の大学や研究所の 老朽化しつつある機器に対する適切な予算措置がなされておらず,教育研究活動に大きな支障が出てきている。この 緊急事態を受けて,化学系研究所長・センター長懇談会,国立大学法人機器・分析センター会議等で議論を重ね,機 器の復活再生と新規機器の導入を行い,全国規模でこれらの機器を相互利用して有効活用を行う組織を構築すること を目指して,分子科学研究所から「化学系汎用機器共同利用ネットワークの構築」の概算要求を行うこととなった。 この結果,全国75の機関が参加し,平成18年2月25日に「化学系汎用機器共同利用ネットワーク協議会準備会」 を岡崎コンファレンスセンターで開催し,ネットワークの目的や地域のネットワークの在り方等に関し意見を交換, 平成19年度の概算要求を行うことを決定した。また,平成18年4月15日に12地域の委員長と分子研の担当者が 集まり作業部会を開催,同年4月27日の「第1回化学系汎用機器共同利用ネットワーク協議会」において概算要求 の内容が決定された。更に,科学技術・学術審議会学術分科会におけるヒアリングを受け,「化学系研究設備有効活 用ネットワークの構築」事業として初年度 28 億円の要求が文部科学省から財務省に提出された。しかしながら,年 末に財務省がまとめた政府案には,19年度は調査費相当の 950 万円が計上されたに止まり,幾つかの要望事項が付 けられた。一方,この事業が正式に認められ,「化学系研究設備有効活用ネットワークの構築」(平成19〜23年度) の目的が,「国立大学における研究設備の老朽化等による危機的な状況を改善し,我が国の研究教育の基盤崩壊を防 ぐとともに,先導的研究を推進するため,化学系の教育研究組織を持つ全国の機関が結集し,全国的な連携調整の下 に「老朽化した研究設備の復活再生」及び「最先端研究設備の重点的整備」を行い,これらにより整備された設備及 び既存の研究設備で外部に公開可能な設備を対象として,全国・地域有効活用ネットワークを構築し,大学間の研究 設備の有効活用を図ること」が確定した。この結果を受けて,平成19年1月26日「第1回化学系研究設備有効活用 ネットワーク作業部会」が分子科学研究所で開催され,19年度には既存設備を用いて相互利用を全国レベルで試行 することに決定し,その試行設備の選考と20年度概算要求の方針,並びに各大学での手続き等について協議された。 作業部会では,有効利用を実証する為に120台の相互利用設備を選定し,ネットワークの利用申込みシステム及び利 用料徴収システムを4月より稼働させることを決定した。これに伴い,ネットワークの全国的な周知を図るためのホー ムページ(http://chem-eqnet.ims.ac.jp/)が開設された。大学共同利用機関としての分子科学研究所の本活動が,我が国 の化学の教育研究活動の基盤の構築に寄与することは,化学系の唯一の共同利用機関としての重要な役割となるであ ろう。